2008年12月27日土曜日

問題行動の原因は推定する必要はない?

いのこです。
12月26日に,阿南養護学校で開催された山本淳一先生の講演会に参加してきました。
山本先生といえば,応用行動分析の立場から特別支援教育に対して様々なアイデアを提案して下さる,日本のオピニオンリーダーの1人です。
講演内容は,発達障害に対する理解と支援をABAの立場から提案しようというもの。徳島ABA研究会が目指していることとも,ぴったり一致する内容でした。

講演内容は盛りだくさんで,示唆に富む内容が多くありました。
“「できる」をのばす”という分かりやすいキーワードで,問題行動に代わる適切行動に注目させるというアイデアは,ぜひ参考にしたい一番のポイントです。

問題行動に代わる適切行動の発見は,特別支援教育の専門家でもけっこう難しい事柄の1つで,いわゆる「経験と勘」が必要な「名人芸」の領域といわれています。
徳島ABA研のサマースクールでは,この名人芸を課題分析して,われわれ一般人でも適切行動を見つけるための教材を作成しようとしていますが,まだ開発途上です。

適切行動の発見の方法について,山本先生の講演の中で生じた疑問がありました。
山本先生は「適切行動の発見のためには,問題行動の原因推定はあまり役立たない」と述べられました。
しかし,これまでABA研で提案してきた方法は,「適切行動の発見のために,問題行動の原因をたくさん推定する」ことでした。
第1の疑問は,この矛盾する条件のどちらが正しいのか(=適切行動発見に有効か)?です。

実は上記については,山本先生と前日の晩に食事した時に,「シビアな発達障害児においては問題行動の機能分析を詳細に行うが,通常学級に在籍するような比較的軽微な発達障害においては問題行動には様々な機能が同時に効いている場合が多い(いわゆる多重制御)ので詳細に分析しても解決策が出にくい」という主旨の解説を伺いました。
この解説が妥当だとして,そこで生じた第2の疑問,問題行動にどのぐらい(何種類ぐらい)多重的な機能制御が予想された時,問題行動の原因推定をやめ,適切行動の発見へと切り替えるべきなのか?

何となく2つの疑問とも,どれが正解というようなタイプの解が見つかるのではなくて,有効と思われる解を見つけるための選択肢が増える,というような結論になりそうな予感がしますが。

山本先生が提案する行動問題を分析する3種類のシートは,適切行動を見つけるための手順のアイデアとしてぜひ教材作成の参考にしたいと思い,講演終了後に早速山本先生の許可をいただきました。
来年のサマースクールや保育士研修にむけて,教材化してみようと思います。

いろいろな疑問や着想を得ることができた,山本先生の講演会でした。
山本先生,阿南養護の皆さん,本当にありがとうございました。

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